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引退競走馬の幸せな馬生のために ―角居師らのプロジェクトに密着取材(1)/動画

2016年07月12日(火) 18:01

第二のストーリー

▲サンクスホースプロジェクトオープニングセレモニー 左からグラッツィア、角居師、西崎純郎氏、エアウルフ


岡山の素晴らしい環境下でのトレーニング


 競走馬になるために生産されたサラブレッドたちは、この世に生を受けた時から厳しい淘汰にさらされる。

 まず買い手がつかなければ競走馬になれないし、馬主がついても故障や能力不足で競走馬になれずに消えていく馬もいる。競走馬としてデビューできても、そこは優勝劣敗の世界。ある程度の成績を収めなければ生き残れず、故障をすれば引退を余儀なくされるか、致命傷の場合は命をも失う。

 現役を退いてもなお厳しい淘汰は待っている。血を残していくための種牡馬や繁殖牝馬になれるのはほんの一部で、そのほかは乗馬という名目で競走馬登録を抹消されるが、本当の意味での乗馬になるのはごくひと握り。乗馬に向かないと烙印を押された馬たちは、ひっそりと食用への道を辿ることになる。

 人間のために懸命に走り、頑張ってきた馬たち。1頭でも多くの馬が第二の馬生へと命が繋がるように、引退競走馬のキャリア支援を目的としたサンクスホースプロジェクトが本格的に始動した。このサンクスホースプロジェクトの活動の核ともいえるのが、引退競走馬の乗馬への再調教だ。

 この再調教を専門とする団体が、吉備中央町の協力のもと「NPO法人吉備高原サラブリトレーニング」として7月1日に立ち上がった。この団体がサンクスホースプロジェクトと手を結び、サラブレッドのリトレーニングを主に担当していく。

 7月2日(土)、岡山県吉備中央町の岡山乗馬倶楽部の覆馬場内で「サンクスホースプロジェクト オープニングセレモニー」が、関係者や報道陣、趣旨に賛同するファンなどが参加のもと開催された。

 サンクスホースプロジェクトを運営するのは、JRAの角居勝彦調教師が代表理事を務める一般財団法人ホースコミュニティだ。まず角居師が挨拶に立ち、

第二のストーリー

▲「走れなかった馬たちの行く末を案じていた」と、プロジェクト立ち上げの思いを語る角居師


「私たちJRAの調教師は馬を速く走らせるのが本来の目標ではありますが、走れなかった馬たちの行く末を案じていた時に、障がい者乗馬、ホースセラピーという分野にぶつかりました。全国的にそれを調査し見学させてもらった時に、経済的に大変な事業であるということがわかり、それを何とか広めたり認知してもらう方法はないかとずっと考えていました。

 その時に競馬サークル、乗馬サークルなどの関係者を集めてサンクスホースデイズというイベントを開催したのですが、高齢者や障がい者、ちびっ子などみんなが馬に親しめるということがわかりました。これを行政ともタイアップしながら活動できないかと、ずっと心の中に思い描いていて、経済的にも自立しなければという構想を練っていたので、西崎(純郎)さんから岡山乗馬倶楽部で始まった活動にご一緒させて頂けるという話を頂いた時に、この船に乗らないでおくべきかと思いました」


 と、NPO法人吉備高原サラブリトレーニングがサンクスホースプロジェクトのプロジェクトパートナーとなった経緯を話した。そして「岡山の素晴らしい環境の中で、元競走馬たちがもう1回トレーニングできると聞いた時に、競走馬でいるよりもこっちの方が幸せではないかなと思いました」と吉備高原の広大な自然の中にある岡山乗馬倶楽部でリトレーニングができることを喜んだ。

第二のストーリー

▲吉備高原の広大な自然の中にある岡山乗馬倶楽部


 続いて壇上に上がったのは、NPO法人吉備高原サラブリトレーニングの理事長で岡山乗馬倶楽部代表の西崎純郎さんだ。西崎さんは馬術選手としても全国レベルで活躍し、全日本馬術大会でも優勝経験がある。・・・

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佐々木祥恵

北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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