▲netkeibaの掲示板から始まった物語、主役のタカラハニー
397、396、394キロ…小さな体で走り続けた競走馬時代
タカラハニーという4歳の牝馬がいる。明るい栗毛に額から鼻筋にかけて走る白い作、そして愛くるしい瞳がチャームポイントだ。
タカラハニーは今、愛知県半田市にあるナリタポニーランチに、ポニーのキュータやペルシュロンの大福、175戦を走り抜いたセントウイナー(牝8)ら仲間たちと一緒に暮らしている。今は馬場で元気に走り回っているハニーだが、ここに至るまでは紆余曲折があった。
▲ナリタポニーランチで暮らす、ペルシュロンの大福
▲175戦を走り抜いたセントウイナー(牝8)
タカラハニー。2013年4月24日に、北海道むかわ町の清水ファームで生まれた。父はカンパニー、母はタカラハーバー、その父ボストンハーバーという血統だ。
2015年5月13日、道営の門別競馬場でJRA認定競走の新馬戦でデビュー。2番人気に推されて、見事に初陣を飾った。その後、11月まで10戦を消化したが、掲示板に載ることはないまま、馬主も替わって笠松競馬場に移籍、新天地での競走馬生活が始まった。
年が明けて移籍2戦目、3戦目で4着、2着と頑張ったのち、中央の京都、阪神競馬場でのレースも経験した。ちなみにタカラハニーは、デビュー戦でJRA認定競走を勝っているので、JRAで実施される特別指定交流競走(地方競馬所属馬が出走できる競走)に出走できる権利を有していた。
2歳時は410キロ台を維持していた馬体重も、明け3歳になってからは400キロ前後になっていた。小さな体で懸命に走るハニーを気にかけるファンも少なからずいたようだ。4月に入ってからは、3回出走して、397、396、394キロと徐々に減っていた。
5月8日には三度、中央競馬の特別指定交流競走、3歳500万下に出走に出走したが、この時の馬体重が、388キロとデビュー以来、最低の数字を記録している。結果は14頭立て14着。さらには骨折も判明して、タカラハニーの引退が決まった。
▲馬場を元気に走り回るタカラハニー、引退からどんな紆余曲折があったのか…
競走馬は「経済動物」。競馬の現場で取材する立場でありながら、この言葉を耳にするたびに強い抵抗を感じる。馬たちは人間のために厳しいトレーニングに耐え、命を賭して走り、たくさんの夢や大きな喜びをも与えてくれる存在だ。
と同時に、馬購入代金に預託料など馬には莫大なお金がかかるのも事実で、それをペイするにはできる限り出走させて出走手当や賞金を得るというのも1つの方法なのだろう。そのような現実を知りながらもなお、競走馬を「経済動物」と割り切るのは個人的に抵抗がある。
以前、柴田善臣騎手に馬の魅力について尋ねる機会があった。「馬は寄り添ってくれる」というのが答えだった。幼少時から馬と触れ合ってきた善臣騎手の言葉だけに、なるほどなと頷かされた。押しつけがましくなく、そっと人のそばにいてくれる。それが馬の優しさなのだ。・・・
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