▲左から東京大学大学院の中村航介さん、北海道大学大学院の瀧本彩加准教授、細江純子さん
2018年6月21日、英科学誌電子版に馬に関する注目の研究結果が発表されました。『ヒトの感情シグナルに敏感なウマ 〜ウマはヒトの表情と声を関連づけて感情を読みとることが明らかに〜』。発表したのは、北海道大学大学院文学研究科の瀧本彩加准教授や、東京大学大学院総合文化研究科修士課程2年の中村航介さんらのグループ。この研究テーマに大きな関心を抱いた細江純子さんと、瀧本准教授・中村さんとの特別対談を本日から4日間連続で掲載します。
(構成:不破由妃子)
大学の馬術部時代は京都競馬場でアルバイト
細江 はじめまして。今日はお忙しいなか、お時間を作っていただきありがとうございます。少し前に、北海道大学の瀧本先生が「馬は人の表情と声を関連付けて感情を読み取るのだろうか」という実験をされたというニュースを見まして、すごく興味を引かれたんです。それで、ぜひ直接お話を伺ってみたいなと思った次第です。
瀧本 ありがとうございます。感情を用いた馬と人とのコミュニケーションについては、まだ科学的に明らかになっていないことがたくさんあります。今回の実験も限定的なものではありますが、ひとりでも多くの方に馬のことをもっと知ってもらえるきっかけになれば…という思いがあったので、興味を持っていただけて本当にうれしいです。
細江 現在は北海道大学・文学部の准教授でいらっしゃるわけですが、そもそもなぜ馬に興味を持たれたのか、その経緯から伺ってもいいですか?
瀧本 はい。大学(京都大学・文学部)に入ったと同時に大学の先輩に誘われて馬術部に入部しました。小さい頃から動物が好きで、観光牧場で馬に乗ったりした経験はありましたが、まさか自分が馬術部に入るまでになるとは思ってもいませんでしたね。体験入部で馬術部に通ううちに馬に対して愛情が芽生えて、馬術部に入ってからはすっかり馬の虜になってしまいました(笑)。
▲「馬術部に入ってからはすっかり馬の虜になってしまいました」と瀧本准教授
細江 そうだったんですね。大学時代はずっと馬術を?
瀧本 はい。馬術部に入って2年目の夏に自分の担当馬ができてからは、毎日馬とかかわる日々でした。また、馬術部にいた頃はずっと京都競馬場でアルバイトをしていました。開催時には、毎週末競馬場で働いていたので、モニター越しではありますが、細江さんの姿もよく拝見していました。
細江 それはそれは(笑)。馬術部の方たちは部費を稼ぐために、みなさんアルバイトをされるそうですね。
瀧本 そうですね。私がいた当時は乗馬用の馬が17頭いたのですが、彼らを養うためには年間で1000万円ほど必要でした。それでみんなでアルバイトをして稼いで。
細江 じゃあ大学の4年間は、馬術と勉強とバイトに明け暮れた日々だったわけですね。その後はどういった経緯で今に至るんですか?
瀧本 馬術部の先輩が、心理学のなかでも動物の心を知る研究をしている研究室に入っていたんです。その先輩が、卒論を書くために馬術で実験をしているのを見て、ああ、こういう学問もあるのかと。それをきっかけに動物心理学の授業を受けるようになったんですけど、大学で受けた授業の中で一番面白くて。その流れで私もその研究室に入ったんです。そこで勉強しているうちにさらにハマっていって、動物心理学の研究室のまま大学院に進みました。・・・
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